地球平面説


八公 「あれは取ったんでなく貰ったんです。吉田の旦那も世の中のことは何でも知ってると言うから、日本から西へずーっと行くと何処へ行きますかと聞いたんです。日本の西にあるのは長崎、その先はと聞くと、その先は海、またその先は西洋、その先は海、海の先は行けども行けども海、行けども行けども海のその先は..その先は、その先は、・・・・・と二時間くらいやったら旦那は喘息が出て、息が上がって、”お前には敵わない、一円やるから帰っておくれ”と言ったから貰ったんです」

 吉田の旦那は大地は平面であると考えていたので、その先は、その先はと問いつめられて詰まってしまったが、コロンブスのように大地は球状であると考えていたなら、その先は、その先はと問われても、またもとの場所に戻ってくると答えて問答を打ち止めにすることができた。

 八公も吉田の旦那も大地が平面だと思っていたから、西へ西へと行ったらと、際限なく問答ができたが
最近ではこの話は地球から宇宙を飛行機でどんどんゆくとどうなるという話に変えられている。
 大地の場合は陸や海があってもそれぞれ境界があるからその先がどうなっているかと問いが出せる。
 宇宙となると方向性や際限が想像しにくいけれども、飛行機では地球からどんどん離れることはできないし、落語としては面白味がなくなりこの話は普及しなかったようである。

 現代では大地と言う言葉に替わって地球という言葉が使われるように、我々が住んでいるところは球状であるというのが常識となっている。
 と文明社会では当然そうだと思っていたら、現在でもアメリカなどには地球平面説(形容矛盾みたいだが)を唱える人々がいるという。
 三井誠「人は科学が苦手」によると、アメリカには「フラットアース国際会議」と呼ばれる、「地球が平ら」だと考える人たちの集まりがあるという。
 この集まりに参加する人々は、「水平線や地平線はどこで見ても平らだ」という実感に基づいて主張するだけでなく、さまざまな視点から証拠をあげているという。
 YOU TUBEなどで宣伝したり、中には自分でロケットを制作し、そのロケットに乗って飛び上がり、実際に目で地球が平らであることを確かめようとした人もいた(飛び上がったのが500メートル程度の高さだったので、高さ不足で確かめられなかったとか)。
 実感としては大地は球面ではなく平面であると思うのは普通であろう。
 学校や親などから地球は丸いと教えられたからといってそれを鵜呑みにせず、自分で実際に確かめようとするのだから、彼らは非科学的な人々だとは言えない。
 しかし、ロケットを自作して打ち上げて観察するところまでやるというのはいかにもアメリカらしくスケールが大きいがエキセントリックでもある。